婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

怖がらせないようにと気を配ってくれていたいつものハグじゃない、思いの丈をぶつけてくるような力強い抱擁だった。

「今が初恋だと陽菜が言うならそれでいい。それで、陽菜が手に入るなら」
「めんどくさい女って思わない?」
「めんどくさくても陽菜がいい」
「……そこは思わないって言ってほしかった」

怜士の背中に腕を回しながら呟くと、耳元でフッと笑ったのがわかった。

「好きだ。陽菜が嫌なら『ずっと前から』とは言わない。だけど、これから一生、陽菜だけを好きだ」
「うん、ありがとう。私も、怜士が好き」

私の言い分を煩わしそうにしないで、ちゃんと受け止めてなお好きだと言ってくれる。

恥ずかしさよりも嬉しさが勝り、自然と気持ちを素直に言葉にできた。

「今まで、ひどい態度とってごめんなさい。部屋の鍵とか、子供っぽい嫌がらせだったって反省してる」
「いや、あの鍵は俺の理性の番人だったから。意外といい働きをしてくれた」
「ん? どういう意味?」

言葉の真意がわからず上目遣いに怜士を見上げると、腕の力を緩めて私の瞳を覗き込む。

「このあと、本当はワイナリーに行こうと思ってたんだ」
「え? あ、うん」

質問の答えになっていない返答に戸惑っていると、再び抱きしめられ、耳たぶに唇が触れる位置で囁かれた。

「予定変更して、ヴィラに連れ帰ってもいいか? 陽菜を抱きたい」

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