婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「陽菜!?」
「陽菜ちゃん!?」
傍観するしかなかった母と怜士のお母さんは驚いて私を見つめる。
きっと彼女達には、父や夫の意見に背くという選択肢はないんだろう。
そういう価値観の中で何十年も生きてきたのだ。それをどうこう言うつもりはない。
でも私は違う。
この結婚では幸せになれないと悟った高校生の頃から、私は何度も両親に『怜士とは結婚したくない』と告げてきた。
さりげなく怜士の女癖の悪さの話も織り交ぜながらこの結婚のデメリットを幾度となく説明し、回避したいと訴えてきた。
それでも父は一切聞き入れてくれなかった。
子供の頃からなりたかった保育士として働くことを許してはもらえたものの、それも今年の誕生日まで。
二十五歳の誕生日を迎えたら、退職して麻生の家に入るようにずっと言われ続けてきた。