婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
時刻は午後三時。真夏なため、おひさまはまだ真上にある。
何を着て出ていくべきか。ちゃんと服を着ていく? 夜じゃないしパジャマはおかしいよね。バスローブ?
恋愛経験値がないせいで、こんなことすらわからなくて困ってしまう。
うん、もういいや。女は度胸!
私はタオルと同じくふわふわのバスローブを下着の上に羽織ると、しっかりと紐を結んだ。
リビングに続くドアをそっと開けて中を伺うが、怜士の姿が見えない。
あれ、うそ。待たせすぎて、どこか行っちゃった?
「怜士?」
不安になって声を上げると「陽菜、こっち」と洗面所のもうひとつの扉の向こうからコンコンとノックの音がした。
そちらのドアを開けると、柔らかいオフホワイトのレースの天蓋がついたキングサイズのベッドに、バスローブ姿の怜士が座っている。
「あれ、その格好」
「こっちに小さいシャワーブースだけあったから、そっちで入った」
「待たせすぎて、どっか行っちゃったかと思った」
「バカ。十年も待ったんだ、今更だろ」
「早くって急かしたくせに」