婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

緊張と照れくささから、口から出てくるのは可愛くない言葉ばかり。足はドアの側から動けないでいる。

そんな私の心の内を理解しているかのように、怜士は優しく微笑み、私に向けて手を伸ばした。

「陽菜。おいで」

それだけで泣きそうになってしまい、ぎゅっと眉間に力を入れ、唇を噛む。

「大丈夫、陽菜が嫌がることは絶対にしない」
「違う、嫌じゃないし、怖くない。ただ、緊張して……」

バスローブの胸元を掴んだまま動かないでいる私に呆れた顔もしないで、ゆっくり近付いてきた怜士は、私の膝裏を掬い上げ、軽々と抱き上げた。

「きゃっ」

驚いている間にそっとベッドに横たえられ、怜士が上に覆いかぶさってくる。

「俺に、陽菜の全部をくれ」

情欲を湛えた色っぽい視線にあてられ、真っ赤になりながらもこくんと頷いてみせた。

「優しく出来る自信はないが、善処する」
「そこは優しくするって言い切ってほしいんだけど……」
「初めて好きな女抱くんだ、そんな余裕ない」

もう黙れ、と言わんばかりに唇にキスが降ってくる。

横柄な言葉とは裏腹に、与えられるキスは優しく甘い。

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