婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
大人しくそれに従う気はなかったけれど、万が一を考えて、大学時代に思いつく限りの資格を取得した。
何があってもひとりで生きていけるように。
一生を棒に振るくらいなら、私は霧崎の家を捨てる。
「それで結婚しなくて済むんなら、喜んで勘当されます」
着慣れない振り袖の裾を気にしながら立ち上がると、怒りのあまり言葉もない父に向かい、私はわざとらしいほど悠然と微笑んでみせた。
「これで、私はもう自由です」
一言一言、ゆっくりと噛み締めてそう宣言した。
このあとのことは、もう私の知るところではない。
意識的に両親を視界に入れず、そのまま個室の出口まで足をすすめると、背後から低い声に呼び止められた。