婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

それから約半年後の八月に、入籍と結婚披露宴が行われた。

怜士と初めてふたりで旅行した軽井沢の教会でこじんまりと挙式だけ出来たら、なんて思っていたけれど、政略的な意味合いもある私達の結婚式は、対外的なお披露目の場でもある。

東京湾とレインボーブリッジを望む披露宴会場への招待客は五百名を超え、贅を尽くした結婚式となった。

怜士は大掛かりになってしまうことに申し訳なさを感じていたみたいだけど、なるべく私の意に沿うようにしようと言ってくれた。

ウェディングドレスに至っては私よりも熱心に選んでいて、真顔で「お色直しは十回はしたい」と話し、プランナーさんに苦笑されていたのもいい思い出だ。

招待客は必然的に麻生グループと霧崎商事の関係者が多かったけれど、私の友人や職場の同僚もお祝いに駆けつけてくれた。

山崎先生や栄養士の矢上さんは、あまりに規模の大きな結婚披露宴に若干引いていたけど、「おめでとう」と祝福の言葉をかけてもらった。

怜士は山崎先生を覚えていたらしく「あの時はすみませんでした。今後も妻をよろしくお願いします」とにこやかに対応していたけど、先生に「端々に牽制の意図を感じるわ。愛されてるな」と呆れた表情で指摘され、今でも『番犬の旦那さん』と職場でからかわれる始末。

同僚であり親友の千花は、颯真さんと夫婦揃って出席してくれた。

妊娠中の彼女はつわりが酷く、無理しなくていいと話していたのだけど、「陽菜のおめでたい席には絶対出席したい」と言い、ちょうど安定期に入って落ち着いたということで出席が叶った。

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