婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

千花とは小学校の頃からずっと一緒で、私の怜士に対する気持ちはお見通しだったと思う。

絶対に結婚しないと息巻いていた時も、再会して家出した時も、いつだって私の心に寄り添いそばにいてくれた。

「おめでとう、陽菜。幸せそうで本当によかった」

涙ぐみながらお祝いしてくれる千花と、そんな彼女を気遣いながらさり気なく支える颯真さんは、政略結婚でありながら互いを深く愛し合っている理想的な夫婦だ。

「ありがとう。ふたりみたいに素敵な夫婦になれるように頑張る」
「ふふっ、今も十分素敵な夫婦でしょ。ね? 麻生くん」

そう言われて隣を見上げると、まんざらでもなさそうな怜士の表情が可笑しくて、千花と顔を見合わせて笑った。


そんな急ピッチで準備を進めた結婚式も無事に終わり、私は今日もまんぷく保育園で働いている。

三月のパーティーでサプライズプロポーズをされたあと、結婚後について話し合った結果、子供が出来るまでは保育士として働き続けることにした。

園長先生も快諾してくれて、今年度はメインの担任を持たずにサブに回してもらっている。

他の先生方にも申し訳ないと断りを入れると、こういうのは持ちつ持たれつだからと、みんな一様に理解を示してくれた。

本当に職場に恵まれ、幸せだと思う。

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