婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
つい昨夜の濃厚なあれこれを思い出して顔を赤らめてしまったのを、彼に目ざとく見つけられた。
「ほら、その顔。陽菜だってまんざらじゃないくせに」
「ん、んんっ!」
爽やかな朝だというのに、壮絶な色気を纏ってキスを深めてくる怜士の胸を必死に叩く。
「違う! もう、ほんとに遅れちゃう」
「仕方ない。続きはまた夜な」
ようやく離してもらえた頃には、私の方が物足りなく感じてしまうのだから始末が悪いと頬を膨らませた。
九月に入り、いよいよ来月には新事業部が発足するらしく、怜士は毎晩帰りが遅い。
新婚早々ゆっくり時間が取れず若干の寂しさを感じるものの、幼い頃からの怜士の夢が叶うと思うと、応援する気持ちの方が断然大きい。
一緒に過ごせる少ない時間の密度を高めるかのごとく隙きあらば触れてくるのは、怜士なりの気遣いもあるのではないかと思っている。
土曜日の今日は雲ひとつない快晴で、まだまだ残暑が厳しく最高気温は三十度だとお天気お姉さんが伝えていた。
空調の効いた部屋で、平日に出来なかった掃除などの家事を済ませていると、スマホにメッセージアプリの通知が来ていた。