婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
『株式会社ASOホールディングス』の社屋は全国に九つ展開されており、本社は私達の住むマンションから徒歩十分の場所にある。
地下三階、地上二十二階建ての自社ビルで、二十階から上は講義室や教室が入っており、教育者に向けたセミナーが開催されたり、近隣の学生が麻生グループの教材を使って課外学習を行ったりする時に無料で貸し出しているそう。
今日はセミナーなどの利用者がいないのか、一階のエントランスは受付も無人で静まり返り、人の気配がない。
駅の改札のようなゲートは社員証がないとくぐれないため、一般の人は出入りできない作りになっている。
私はスマホを取り出して怜士に着いたことを知らせ、あまり空調の効いていないエントランスで彼を待っていた。
新事業を軌道に乗せるというのは、いくら怜士が優秀でも大変なものなのだろう。
こうして休日まで仕事にあて、必死に働いている彼を、妻としてしっかりサポートしてあげたいと思う。
エントランスホールには、麻生グループが展開している家庭学習の教材の宣伝や、経営している塾の実績などが大きく張り出されている。
難関大学に今年は何人合格しただとか、タブレットを用いた通信型教育の在り方などを読んでいると、ふいに後ろから声を掛けられた。