婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

「ねぇ。今の女の人、知り合い?」
「あぁ。俺と同期入社で、今回のプロジェクトにも入ってもらってる」

同期入社……。

それだけで『怜士くん』なんて呼ぶものなのかな。

思えば、怜士の社内での交友関係は全く知らない。

結婚式に来てくれた何人かの友達は紹介してもらったけれど、みんな麻生グループとは無関係の人ばかり。

社会人になってからは仕事一筋で、特に疚しい関係の女性はいなかったと聞いている。

信じていないわけじゃないけど、もやもやした感情が心の隙間に挟まっている自覚はある。

それなのに、いい奥さんを演じて「午後も頑張ってね」と送り出した。

結局、毎日忙しそうにしている怜士に彼女と特別親しいのか聞くことも出来ず、小さなわだかまりは喉につかえたまま。

しかし何日か過ぎると、徐々に冷静に考えることが出来た。

こんなことにいちいち引っかかる方がおかしい。私だって、職場の先生たちと飲みに行ったりするくらいには仲が良いんだから。

何度も自分に言い聞かせて、今日もいつも通りの笑顔で怜士を出迎えた。

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