婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「悪い、弱音なんて吐いて。心配かけたかったわけじゃないんだけど……。格好悪いな」
「ううん、全然そんなことない。仕事だし話せないこともあるだろうけど、可能な限り聞きたい。会社じゃ言えない愚痴も、私には話してほしい」
「あぁ。ありがとう」
微笑みながら感謝のキスが目尻に降ってくる。
いつもならそのまま甘い雰囲気になるんだけれど、話の続きがしたくて瞳を閉じずに怜士を見つめた。
「でもごめん、言わせてね。理想を捨ててつくりあげた教育で、本当に学ぶ楽しさを伝えられる?」
怜士本人だって何十回と自問自答したであろう質問を投げかけられ、眉間に皺が寄った。
それに怯むことなく、私は言葉を続ける。
「保育園にもすごくたくさん習い事をしてる子がいるし、もちろん楽しんでいろんなことを吸収している子もいる。でも、実際はそんな子供ばかりじゃない。本人が楽しんでやらないと身につかないし、長い目で見たときに意味がないと思うの」
親が子供に“こうなってほしい”と理想を託すことは悪いことじゃない。
だけど子供の言い分を聞かずに押し付けてしまえば、それは親のエゴになる。
「データよりも、子供たちの生の意見を聞けたらいいのにね。そうすれば他の人の意見だって変わるかもしれないし」