婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
教育論のことになると、つい熱くなって語ってしまうのは昔からだけど、今のは空気が読めなさすぎた。
自己嫌悪で俯いていると、怜士が私の頭を乱暴に撫で回した。
「わっ!」
「陽菜の言うとおりだ。数値も大事だけど、机上の空論じゃ意味がない」
くしゃくしゃになった私の髪を手櫛で梳きながら、怜士が強気な顔で笑う。
あぁ、私の好きな表情だ。その顔を見て、トクンと胸が高鳴る。
「需要がないなら作り出せばいい。新しい幼児教育の流行を、うちの会社で生み出してみせる」
疲れの滲んでいた怜士の表情は生き生きと輝きだし、頭の中は仕事モードに切り替わっているのが見て取れた。
「子供の反応を直接見られる機会を作るのもいいかもしれない。どこかイベントスペースでワークショップを開くとか」
「それ楽しそう! ショッピングモールとかで体験型の教室があると、保護者の目にも触れやすそうでいいかも」
「そうだな。既存の学生向けの通信教育の広報と一緒に、それまでに出来ればAIシステムも形にして……」
口元に手を当て、ブツブツ呟きながら考えを纏め始めた怜士を見て笑みが溢れる。
やっぱり怜士はこうじゃないと。
利益や採算を度外視しろとは言えないけど、決して理想は捨てずに、自分の思い描く未来を形にしてほしい。