婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
とはいえ、もうすぐ臨月を迎える千花に、私の取るに足らない愚痴なんて聞かせたくない。
すると、千花は声をひそめて予想外のことを聞いてきた。
「ねぇ。もしかして、つわりだったりする?」
「え?」
思いがけない質問に目を丸くする。
「私も最初気付かなかったけど、妊娠初期ってだるかったり食欲なくなったりしたから。あと、変に落ち込みやすいというか、ナーバスになったり」
そう言われて考えてみれば思い当たることばかりで、確かに今月の生理がまだ来ていない。
元々周期が不順なせいでそこまで気にしていなかったけど、もしかして……?
私はドラッグストアに寄って検査薬を購入すると、帰宅して真っすぐトイレに向かった。
説明書を読んで試してみると、九十九パーセントの正確さを誇る検査薬の小窓には、くっきりとピンクの二本線が浮かんでいた。
「うそ……ほんとに……?」
驚きと喜びで、スティックを持つ指先が震えた。
そっとお腹に手を当ててみる。