婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
地下一階からエレベーターに乗せられ、辿り着いたのはこのホテルに二部屋しかない最上階のインペリアルスイートルーム。
元々口数が多い方ではない怜士だけど、ここに来るまでは一言も話さないまま。
何を考えているのか、全くわからない。
なぜ『話さないか』と誘っておきながらエレベーターに乗せられたのかと思ったが、こうして部屋を取っていたとは驚きだった。
それでも普段の怜士の素行を思い返せば、きっとこれが通常運転なのではないかと思った。
女性とホテルのレストランで食事をし、そのまま上階の部屋へ連れて行って楽しむ。週刊誌に書かれていたとおりだ。
今日会うのは私だとわかっていたのに部屋を取っていただなんて、一体どういうつもりなのだろう。
無駄に豪華な部屋に入るよう促され嫌々ながら足を進めるが、ふかふかな絨毯は草履だと歩きにくい。
心情的にも、相手は怜士とはいえ男性とホテルの一室でふたりきりになるというのが、さらに足取りを重くする要因だった。