婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「とりあえず座って」
重厚な趣のあるテーブルセットのソファに座るよう促されたが、ここに長居するつもりはない。
「話って何?」
私は怜士の言葉をきれいに無視して立ったまま問いかける。
わざわざ場所を移してまでしたい話など、私には一切ない。
怜士を睨みつけるように問いかける私に、彼もこちらに鋭い視線を向けてきた。
「どういうつもりだ」
「何が?」
「結婚しないってどういうことだ」
「どういうって、そのままの意味だけど」
怜士だってその方がいいはずだ。
年上のモデルと週刊誌を賑わせていたのはたった二ヶ月前。
青年実業家としか書かれていなかったけど、写真を見れば彼を知っている人ならひと目で怜士だと分かる。
そんな相手がいるのに、私と結婚なんてしたいわけがないだろう。