婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

どれだけ言いたいことを言い合っても、翌日には怜士が普通に話しかけてきて、ケンカなんてなかったかのようにそばにいてくれた。

その優しさに当時も気付いていながら、素直にお礼も言えなかった自分が情けない。

だけど、今回はケンカにすらなっていない。

怜士を好きな気持ちが育ちすぎて、嫌われるのが怖かった。

思っていることを言葉にしないで飲み込んで、消化しきれずに吐き出して、後悔して……。

はじめから、ちゃんと言えばよかった。

親しげな呼び方も、意味深な視線も、頻繁な電話も。本当は全部気になってるって、最初から素直に言えばよかったのに。

つわりのせいなのか、感情の起伏が激しく、イライラすると思ったらすぐに悲しくなる。

自己嫌悪の感情が涙になり、シーツが色を変えていくのを、ただじっと見ているしかできない。

ごめんね。あなたのこと、パパに伝えられなかった……。

両手で自分のお腹を包み込むように抱きしめ、赤ちゃんに謝りながら夜を明かした。






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