婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
怜士にとって大事な第一歩。その瞬間を私に見ていてほしいと思ってくれるのは、素直に嬉しい。
体調がいいとは言えないけれど、少し落ち着けば短時間の外出くらいは大丈夫だろう。
「うん、わかった。見に行く」
「ありがとう」
嬉しそうに微笑んでくれる怜士にホッとする。
玄関でのお見送りのハグとキスはいつも通りのはずなのに、どこか互いに気を遣い合っている雰囲気が消えない。
怜士は小さく苦笑して「いってくる」と出ていった。
土日に大型ショッピングモールのイベントスペースを借りて開催するワークショップは、事前の告知のおかげか、私が着いたときにはすでに多くの親子連れで賑わっていた。
噴水広場は風船やイラストが描いてあるポスターで可愛く装飾され、備え付けの大きな液晶スクリーンには麻生グループが手掛ける塾や通信教育のCMが流れている。
大人の膝の高さほどしかない小さなテーブルが左右に六台配置され、ひとつの机に椅子は四つ。
それぞれのテーブルに担当の職員がつき、親子の相手をするらしい。