婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「どっちがはやと君のお名前でしょーうか!」
クイズのように節を付けて問題を出すと、はやと君は私の書いた文字と図鑑をキョロキョロと見比べて「こっちー!」と正解を指さした。
「ピンポーン! すごいね、どうしてわかったの?」
「えっと、だって、これがはやぶさってひなせんせいがいったから。それでこっちがぼくのはやと」
図鑑と画用紙を交互に指差し、一生懸命理由を説明してくれる。
「正解です! すごい、ひらがな読めちゃったね!」
「えー、だってかんたんだったもん! もっとむずかしいやつ!」
「いいよー! 今読めたやつを真似っこして書いてからね」
そう言うと、はやと君は持っていたプリントに“はやと”と“はやぶさ”の七つのひらがなを、四苦八苦しながらも楽しそうに書いてくれた。
次に私が画用紙に“ひな”と“ひかり”の文字を書き、はやと君に見せる。
「私の名前はどっちでしょーうか!」
「えー、ひなせんせいのなまえ?」
「ほら、これと同じ文字を図鑑で探してみて」
ヒントを与えながら、でも考える力を奪ってしまわないように誘導する。
「あったー! これ、しんかんせんのひかりだ。じゃあ、ひなせんせいのなまえはこっち!」
「ピンポーン! おんなじ文字だったのは?」
「ひ!」
「正解! はやと君すごい! これも真似して書いてみようか」
「おっけー」