婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
嬉しそうにおどけて書き出すはやと君がとても可愛い。
「ねぇひなせんせい、もっとひらがなのクイズやりたい」
「いいよー、じゃあ次は」
一緒に図鑑をのぞきこんでいるところに「いーれーて」と、はやと君よりも少し大きい女の子が声を掛けてきた。
「いーいーよ」
それに対して答えたはやと君は、早速女の子に自分の書いた名前を見せている。
「ぼくはやとだよ。これ、なまえ」
「じょうずだね。わたしはのぞみだよ」
「のぞみ? しんかんせんといっしょだ。これ、のってるの」
ひかりと同じページに載っていた“のぞみ”を見つけると、「いっしょに“のぞみ”ってかこう」と、鉛筆を渡してふたりで楽しそうにひらがなを書き始めた。
その様子を微笑ましく見ていると、「隼人!」と先程職員と話し込んでいた彼の母親が慌てた様子でやってきた。
「すみません、目を離してしまって。ご迷惑をおかけしました」
「いいえ、こちらこそ勝手に一緒に遊んでしまってて」
頭を下げる隼人君のお母さんに恐縮していると、彼が「ママみて! これぼくかいた」とプリントをぱたぱたと振ってアピールしている。