婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
このままだと、ワークショップの邪魔になってしまうかもしれない。
どうしようかと困っていると、「じゃあ次は俺が問題を出そうかな」と楽しそうな声がした。
「怜士……」
いつの間に私が来たことに気付いていたのだろう。
もしかして、子供たちの相手をしているところを見られてた?
驚きに目を見開いていると、彼は私の耳元でこそっと「さすが陽菜先生、惚れ直した」と囁いてくる。
こんなところで、なに考えてるの……!
顔を真っ赤にして耳を押さえたのを横目に、怜士は可笑しそうに笑いながら私の頭をぽんぽんと撫でると、隼人くん達が待つテーブルの前で膝を付き、なに食わぬ顔で子どもたちの相手をし始めた。
「よし、みんなひとつずつ積み木持ったか?」
「はーい」
「じゃあこれと同じ様に置いて、全部で何個あるか数えてみよう」
「いーち、にーい」と元気な声をあげる子供を見守る表情は生き生きとしていて、夢を語っていた学生の頃と変わらない怜士が目の前にいた。
左側のテーブルにいた親子も、こちらの盛り上がりが気になっている様子で、気付けばかなりの人数が怜士のいるテーブルに集まっている。