婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
後継者を指名するパーティーで陽菜との婚約を発表したので、俺の結婚は社内でも話題になっていたらしい。
結婚式に招待した友人から『俺の周りにも、お前の結婚にショックを受けてる子、結構いるよ』『政略結婚なら、付け入る隙きはまだあるって思われてるみたいだね』などと耳打ちされたが、外野の意見などどうだっていい。
陽菜には聞かなかったことにすると言われてしまったが、俺にとって彼女が初恋で、唯一愛した女性。
陽菜も俺を想ってくれていて、誰がなんと言おうとこの結婚は政略結婚なんてものではない。
だがそれをいちいち吹聴して回ろうとは思わない。自分たちが納得していればそれでいい。
「文科省とのパイプを担保に結婚でも迫られた?」
「は?」
「どうして仕事のことにまで奥さんが口出ししてくるの?」
攻撃的な口調に顔をしかめる。
口出しされてるわけじゃない。陽菜と話していると、自分の理想とする幼児教育の形がはっきりと見えてくるのだ。
俺の夢を理解し、役に立ちたいと保育士としての意見をくれる。
会社員ならではの利益や予算などといった考えのしがらみがない分、理想論に近く、気を遣わない間柄なので辛辣で容赦がないが、保護者の目線はもちろん、子供のことを第一に考えた意見はさすがプロだと参考になる。
この企画は元々幼い頃に陽菜と語った夢の実現。口出しではなく、陽菜は発案者のひとりなのだ。