婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「今日、本社の近くまで行ったの。送ってくれてたメッセージ見てなくて」
「そうか。連絡がギリギリになって悪かった」
わざわざ会社の近くまで来てくれたということは、陽菜も今日の約束を楽しみにしていてくれたのだろう。
なおさら直前でキャンセルになったのが申し訳ない。
しかし仕事のトラブルで約束を守れなかったことが、陽菜をここまで不機嫌にさせてるとは到底思えなかった。
前日に、忙しくてゆっくり時間が取れていないことを謝ると、『楽しそうに仕事してるの、好きだなって思いながら見て応援してるし』という可愛らしいセリフで俺の煩悩を刺激したのは記憶に新しい。
一体、陽菜はなにを不満に思っている?
その疑問は、すぐに解消された。
「池田さんと一緒に歩いてた」
「あぁ。残業が確定して、一緒に残るメンバーの夕飯をまとめて買いに行ったんだ。彼女が手伝うと言ってくれたから、近くのコンビニに」
「焦って言い訳しなくてもいいよ。最近電話もよくかかってくるし、仲がいいっていうのは嫌って程わかってるから」
突き放すような言い方に、思わず眉を顰めた。
この感じは覚えがある。陽菜と再会した当初、同居し始めた時の彼女は、こんなふうに俺のことを拒絶していた。