婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
あの頃は互いに誤解があり、陽菜が俺のことを信じられなかったのは仕方がない。
ホテルでの俺の暴挙を思えば、避けられて拒絶されるのも当然だと思える。
だが、今は違う。
再会してからの一年半の間、俺たちは距離を縮め、信頼関係を構築し直し、永遠の愛を誓いあって結婚したはずだ。
「もしかして、俺のこと疑ってる?」
やるせなさから、思わずいつになく低い声で問いかけると、陽菜がビクリと身体を竦ませた。
みるみるうちに瞳が涙で潤んでいく様子に、やはりなにか思うところがあるんだろうと感じる。
「陽菜」
「ごめん、今のなし。忘れて」
逃げようとする陽菜の手を掴み、その心の内を晒してほしいと顔を覗き込む。
「待てって。ちゃんと話そう」
思えば今日の食事に誘ったのだって、きっとなにか重要な話があったんじゃないだろうか。