婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
陽菜はワークショップの前祝いだと笑っていたけれど、なにか話したいことがあるとも言っていた。
もしかしたら、そちらがメインなのではないか。
忙しさにかまけて、俺はなにか大事なことをを見落としている……?
「不満があるなら言って。それに、今日は話したいことがあるって言ってただろ」
池田の名前を出したということは、やはり何度も掛かってくる電話に不信感を持っていたんだろうか。
仕事の話しかしていないとはいえ、電話がくるたびに浮かない顔をしていたのを見ていたはずなのに、咎めない陽菜の優しさに甘えてしまっていたのかもしれない。
そう思って声を掛けたが、陽菜は頑なだった。
「ごめん。頭冷やしたいから、今日は自分の部屋で休む」
長年の付き合いだからこそわかる。これ以上問い詰めたところで、きっと今は話さないだろう。
彼女がなにを思い詰めているのか、見当もつかない自分が情けなくてため息が漏れた。