婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
そのぬくもりを感じながら、俺は素直な感情を口にする。
「ありがとう、陽菜。凄く嬉しい」
いつかふたりの子供がほしいとは思っていたが、まさかこんなに早く授かれるとは思っていなかった。
「喜んでくれる?」
「もちろん。当たり前だろ」
「うん。よかった」
腕の中から俺を見上げる陽菜の嬉しそうな顔が可愛くて、たまらずに唇を奪う。
「んっ! もう、ここ病院なのに……」
「悪い、我慢出来なかった」
「……バカ」
悪態をつく陽菜を再び腕の中に閉じ込めると、彼女はぽつぽつと心の内を明かしてくれた。
「昨日はごめん、嫌な言い方して。妊娠したことを打ち明けようと思ってた矢先に池田さんと一緒のところを見て、自分でも不思議なくらい落ち込んじゃって……」
「いや。そんなタイミングで約束破られたら怒りたくもなるよな」
妊娠したことを報告しようとしていたのに、約束を破った上に他の女性と歩いていたら、誰だって嫌な気持ちになるだろう。
「千花にも言われたの、妊娠中は不安定になるものだって。だからって、あんな言い方はなかったよね」
こてんと頭をもたれかけさせたまま、陽菜は続けた。