婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「本当にごめんなさい」
私が貧血で倒れ病院に運ばれた翌日、土日で開催されたワークショップを終えて、退院前に池田さんが病室に謝罪に来てくれた。
「政略結婚だって思ったし、嫉妬してたんです。入社以来ずっと麻生くんが好きで、私の方がそばで彼を支えてるんだって自惚れてた……」
心の内を素直に話して謝ってくれた彼女をこれ以上責める気はない。
ずっと想いを寄せていた人が政略結婚をしたと聞けばショックだし、もしも愛のない結婚なら付け入る隙きがあるかもと期待してしまう気持ちもわかる。
だけど、私だってずっと怜士が好きで苦しい思いもしてきた。
譲るわけにはいかない。
「それに、私が全力で取り組んできた仕事まで否定されている気がして。邪魔しないでとか部外者とか、失礼なことを言って、本当にすみませんでした」
「そんな、もう謝らないで下さい。仕事に関して私が部外者なのは事実だし、ワークショップの進行を邪魔してしまっていたのなら、謝るのは私の方ですから。顔を上げて下さい」
何度も謝られて恐縮していると、顔を上げた池田さんの視線が私のお腹で止まった。
「あの、妊娠されたって……」
「はい。まだ二ヶ月ですけど」
恐る恐る問う池田さんに、躊躇しながらも頷いた。