婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
きっと怜士から聞いたんだろう。今朝怜士から電話で、ワークショップのあとに池田さんとふたりで話してくると言われた。
どんな会話をする気なのかは聞かなかったけれど、彼女を責めないでほしいとだけ伝えた。
もう嫉妬心は沸かなかったし、思っていたことを全部打ち明けられたおかげか、つわりも治まって体調まで回復した。我ながら現金だと笑えてしまう。
ワークショップ後の電話で、『直接謝りたいと言っているが、どうする? 嫌なら無理に会わなくてもいいんだぞ』と言う怜士に、池田さんとふたりきりで話がしたいとお願いした。
彼はいい顔をしなかったけれど、どうしてもふたりで話してみたかった。
願いを聞き入れてくれた怜士は、一時間後に迎えに来ると病室を離れてくれている。
「おめでとうございます! ……なんて、私に言われても嬉しくないかもしれませんが」
「ううん、嬉しいです。ありがとうございます」
首を振って微笑んで見せると、池田さんは吹っ切れたような笑顔を浮かべた。
「あーあ! 失恋しちゃった!」
ぐっと両手を天井に向け、背伸びをした彼女に目を丸くする。