婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「すごいです。このプロジェクトに池田さんみたいに優秀な人がいてくれて良かった」
本心からそう告げると、彼女は綺麗な形の眉を片方だけ上げて意地悪く笑う。
「あら? あなたの初恋の旦那様に懸想するような女よ?」
その言い方が可笑しくて、思わずぷっと吹き出してしまった。
「怜士ってところが癪だけど、趣味が似てるってことです。私は池田さんと仲良くなれそうって思ってるんですけど……無理ですかね?」
確かに以前は嫌な思いをさせられたけど、こうして謝ってくれたこと、さらにワークショップで垣間見た仕事に対するプライドも、私の中では好印象に転じていた。
気が強く、言いたいことを言い合えそうだというのも、仲良くなりたいと思える一因だ。
長い期間、怜士に片思いをしていたというのなら、私の立場でこんなことを言うのも無神経かもしれないと思いつつ、吹っ切れたように話す池田さんに希望をもった。
「麻生くんなのが癪って、私じゃなくあなたがそれを言うのね」
「だって、あいつには学生の頃から随分やきもきさせられましたから」
「そうは言っても、麻生くん、学生の頃から陽菜に夢中だったんでしょ?」
「いや、それが実は……」
つい私達のいきさつを愚痴ってしまいそうになる。それは、彼女の親しげな話し方のせいだ。