婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
あれ? 今、池田さん……。
「え、すごい自然に『陽菜』って……」
「なによ、いいじゃない呼び捨てで。麻生くんと同級生ってことは、私達も同い年でしょ」
ちょっと照れたように口を尖らせる池田さんが可愛らしい。
これぞツンデレってくらい、テンプレな池田さんの言動に頬が緩む。
「じゃあ私も! 池田さん、下の名前は?」
「奈美よ」
「奈美ちゃん」
嬉しくてオウム返しに名前を呼んだところで、ふと気付いた。
「……あれ? 私、自分の名前言ったっけ?」
怜士の妻として認識はされていても、自己紹介をした覚えはない。
不思議に思って訊ねたが、返ってきたのはまったく関係ないと思われる質問だった。
「幼児教育の教室名、決まったの聞いた?」
質問と全然違うことを逆に問いかけられ面食らう。