婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

「寒くないか? 室温少し上げるか」

自宅マンションに帰ってくるなり空調パネルを操作した怜士は、つわりが辛くないか、身体を冷やさないようにと、退院説明をしてくれた看護師さん以上にかいがいしい。

大事をとって一泊入院をしたものの、血液検査の結果、若干の貧血がみられたのみで、赤ちゃんに異常はなかった。

今後は鉄分を含んだ食材を積極的に取り、余計なストレスを避け、十分な睡眠を確保すれば大丈夫とのこと。

万が一つわりが重くなって食事がままならなくなったら、点滴も出来るので我慢せずに受診するよう言ってもらったので安心だ。

だけど、怜士にとってはそうではないらしい。

「陽菜が倒れたのを見て、本当に血の気が引いた。もう二度と味わいたくない」

綺麗な顔を歪めて言われてしまえば、心配をかけて申し訳なかったと謝るしかない。

「ごめんね。今後はちゃんと気をつけるから」

ソファに座り、お腹に両手を当てて答えれば、怜士が私の手ごと愛おしそうに撫でる。

「いるんだな、ここに。俺たちの子が」
「うん」

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