婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「ん……」
「体調は? 仕事を続けるのは反対しないが、家事は無理しなくていいからな」
「ありがとう、もう本当に平気。なんかごめんね、精神的にグラグラしてたのが体調にも出たみたいで」
「気にするな。妊娠すると、みんなそうなるものだって言ってたろ。それに、不安にさせた俺に原因がある」
「ううん。昔のことは忘れて怜士と一から恋をするって決めたはずなのに、結局色々思い出して、勝手にもやもやしてたのは私だから」
至近距離で甘く見つめる怜士の瞳には、私への溢れるほどの愛情が宿っているのがわかる。
恥ずかしかったけど、もう一度キスをせがむように自分から顔を寄せると、嬉しそうに目を細めて私の願いを叶えてくれる。
激しく口腔をおかされるキスではなく、優しくゆっくりと舌を絡め、互いの愛情を蕩けさせ合うような口付けをされ、幸せすぎて涙が滲んだ。
どうしてこの人を疑うことが出来たんだろう。
こんなにも、私を想ってくれているのを隠さずに伝えてくれているのに。
言葉でも行動でも、ずっと真摯に愛情を注ぎ続けてくれている。
過去の誤解からの自分の行いを悔い、言い訳をしない代わりに、私だけを想っているのだと信じさせてくれた。
落ち着いた今、昨日までうじうじと悩んでいた自分が滑稽にすら思える。
些細な事でグラついて、想像だけで暴走して、怜士に当たってしまった自分が恥ずかしい。