婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
気まずそうに歯切れの悪くなった怜士に先を促す。
「あー、だから、嫁の妊娠中に男の浮気が多いって話。俺には一切関係ないから」
打ち切るように話を終わらせた怜士に笑みがこぼれる。
「なるほど。そういう心配ね。確かに、まったく考えなかった」
「当たり前だろ。他の女に興味はない」
きっぱりと言い切ってくれるのが嬉しくて、今度は自分からキスをした。
「……俺の理性、試してる?」
「ふふっ、ごめんね。嬉しくて、つい」
若干情けない顔になっている怜士が自分の腿に両肘を置き、何かに耐えるように大きく息を吐き出す。
その様子をくすぐったい思いで見ながら、私は話題を変えようと、今日聞いた話を持ち出した。
「奈美ちゃんから聞いたの。幼児向けの教室、名前が決まったって」
「……奈美ちゃん?」
「池田奈美ちゃん」
「なんでそんな親しくなってるんだ……」
眉間に皺を寄せた怜士だけど、それ以上突っ込む気はなさそうで、すぐに話題を戻した。