婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

『この結婚は十年も前から決まってたことだろ』

そう言った怜士は冷たい目で私を見つめる。

「だから何?」
「今更なかったことになんか出来ない」
「出来るでしょ。怜士が結婚なんてしないって拒めばいい。私は十年前からこの結婚は嫌だって言い続けてるんだから」

日本の法律上、万が一勝手に婚姻届を出された所で無効になる。

本人がこの結婚に乗り気じゃない限り成立しない。

「俺は拒む気はない」
「……どうして? お互い嫌ってる同士で結婚して何になるの?」

意味がわからない。
当然怜士だってこの結婚に反対だと思っていた。

学生の頃は言うに及ばず、今現在だって恋人がいるはずだ。

「私は結婚するなら自分が好きになった人とする。家の犠牲になるなんて冗談じゃない」

怜士が「……犠牲」と呟いた。

一瞬傷ついたような顔に見えたが、すぐに睨んできたので気のせいだと思い返す。

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