婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「プロジェクト名は、だいぶ前から実現したらこの名前にしようって決めてた。子供の頃、陽菜が一緒になって考えてくれた、俺の夢の第一歩だから」
「うん。聞いた時はすごく照れくさかったけど嬉しい。たくさんの人に知ってもらえる教室になるといいね」
「あぁ。必ずそうしてみせる。それから」
そこで一旦ひと呼吸置くと、怜士は真剣な眼差しで私を見た。
「陽菜は『昔から好きだったというのは聞かなかったことにする』と言ってたけど、やっぱり俺の初恋は一緒に夢を語ってくれた小学校の頃の陽菜だ」
「怜士……」
「あの頃、陽菜がそばにいてくれたからこそ今の俺があるし、その時から気持ちは変わらない。陽菜だけが好きだ」
再会してから、何度も何度も伝えてくれた言葉。
今はもう、心から素直に信じられる。
『昔から好きだったというのは聞かなかったことにする』なんて、めんどくさいことを言った私を受け入れてくれたように、今度は私が、過去に嫉妬していた幼い自分を脱却して、ありのままの怜士を全部受け止めたい。
「うん。私も、子供の頃からずっと怜士が好き」
「陽菜」
なぜかぽろりと涙が一粒頬を伝った。
怜士は驚いて焦った顔をしていたけど、これはネガティブな涙じゃない。
勘違いして、すれ違って、誤解を解いたけど、すべてを受け入れられなくて。
ずっと苦しかった感情が、一粒の涙になってこぼれていった。