婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「もう、不安になったり嫉妬したりしないでいられる気がする」
過去を切り捨てて、想いが通じ合った時が初恋だって言い訳し続けてきたけれど、やっぱり私の初恋だって子供の頃。
幼いながらに会社を継ぐ覚悟を持って夢を語る怜士が、私に恋のはじまりを教えてくれた。
「ずっと好きだった。嫌いだって、結婚なんてしないって言い張ってるときだって、ずっと怜士のことを意識し続けてた」
「陽菜」
「『聞かなかったことにする』とか、めんどくさいこと言ってごめん。私を好きだって言いながら他の女の子と一緒にいた過去に嫉妬するのが苦しくて、ずっと目を背けてたの」
臭いものに蓋をするように、向き合おうともしないで過去の怜士から逃げていた。
切り捨てたはずの過去を思い出してもやもやしてしまったのは、ずっと逃げてきたツケが回ってきてしまったということ。
「全部受け入れる。子供の頃から好きでいてくれたことも、学生時代のすれ違いも、今回些細なことで嫉妬してしまった自分も。その上で、私は何度だって怜士に恋をするから」
強くなりたい。
怜士の妻として。この子の母として。
溢れた涙を拭って濡れた手を取って、怜士がそっと指先に口づける。