婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「そんなことない。ずっとそばに居てくれたから耐えられたんだもん」
それに加え、入院中もゆっくり休めるようにと、病室は個室を手配してくれていた。
広々とした部屋にはリクライニング式ベッドや大型テレビの他に、ソファセットやドレッサー、ダイニングテーブル、ミニキッチンまで完備されていて、高級ホテル生活となんら遜色ない待遇だ。
とはいえ、傷の痛みで歩き回ることもできなかったので、一日のほとんどをベッドの上で斜めに座って過ごしただけで、豪華な部屋なのが逆に申し訳ない気がしてしまう。
「退院したら、陽菜はゆっくり休んでくれたらいいから」
「ありがとう」
怜士はベビーベッドから、真っ白なフリルのあしらわれたベビードレスを着せられたさくらを抱き上げる。
授乳のために必死に起こそうとするけれど、彼女はぐっすりと気持ちよさそうに眠ったまま。
「あれ、起きないな」
「足の裏、こしょこしょしてみて」
彼はまだ覚束ない手つきで抱っこしながら、足の裏や耳を刺激してみるが、さくらは小さなお腹を上下させて起きそうにない。