婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
なんとか渋る怜士をソファに促し後ろを向かせ、さくらのお腹を満たしてあげると、抱っこして優しくトントンと背中を叩く。
「けふっ」
可愛らしい見た目にそぐわぬ立派なげっぷをしたさくらは、またうとうとと目を閉じはじめる。
「代わる」
「うん、ありがとう」
愛おしそうにさくらを抱っこする怜士は、もうすでに娘を溺愛するパパの顔になっている。
「仕事大丈夫だったの? 来月にはもう生徒さんの募集始まるんだよね?」
ワークショップから『ひなクラス』の方向性がしっかりと固まり、怜士が目指した通りの方針の教室が、来年の四月からオープンする。
まずは都内の五ヶ所に絞って開始し、軌道に乗れば徐々に数を増やしていくらしい。
この幼児教室『ひなクラス』を皮切りに、未就学児向けの通信教材や託児所の開設など、幅広く事業を展開していく予定で、幼児教育事業部の部長を務める怜士は多忙を極めている。
「あぁ、問題ない。池田が『今どき男性だって育休を取るべきだ』って息巻いてた」
「ふふっ、それ私にも言ってた。『ちゃんと麻生くんにも育児させるのよ』って」
奈美ちゃんとは定期的に連絡を取り合うくらい仲良くなり、産後三日目にはお見舞いにも来てくれた。
今や彼女はひとつの教室を任される主任という立場になり、バリバリ働いているらしい。