婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

「ふざけんな。……霧崎商事にいくら援助したと思ってる」
「……援助?」
「何で俺たちの結婚が決まったのか知らないのか」
「どういうこと?」
「霧崎商事は十五年くらい前から業績が右肩下がりで、うちの会社が資金援助してきた」

初耳だった。
霧崎商事は血筋の男児が継ぐという古めかしい決まりがあり、私はこれ幸いと後継ぎ問題から逃れたせいで、会社のことは一切なにも知らない。

「当然こっちにも利はある。霧崎家は旧華族で政界や財界へのパイプがいまだに太い。麻生は大きくなったとはいえ、そこらへんとは繋がりが薄い」

怜士は他にも麻生とうちが結びつくメリットを仕事に絡めていくつか説明していたみたいだけど、私の耳には一切入ってこなかった。

「だから、私との結婚で霧崎と縁続きになろうってこと……?」

理解しようとすればするほど、頭が真っ白になる。

両親は自分たちの娘が大企業に嫁いだという事実が欲しいのだと思っていた。旧華族の名に相応しい嫁入りをしたという実績が、彼らの自己満足に繋がるのだと。

それだけでも売り払われるみたいだと思ってたけど……。

売り払われる『みたい』じゃない。

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