婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「私は、両親に『売られた』んだ……」
業績の悪化を補填するための資金援助と引き換えの政略結婚。
麻生グループが欲している人脈確保のため、旧華族である霧崎家の人身御供。
女性だって結婚しないで自立して生きていけるこの時代に、まだこんな身売りみたいな結婚があるだなんて思いもしなかった。
霧崎家だけの問題だったら、勝手に勘当でもなんでもされて知らないふりを貫ける。
だって勝手に結婚を決めたのは両親だ。家の体裁だなんて私には関係ないと言い張ればそれで終わる。
だけど、会社が関わってるとなれば話は変わってくるのではないか。
もしも私が約束を反故にして逃げたら、霧崎商事はどうなるんだろう。
麻生側はきっと資金援助を取りやめるだろう。それどころか、これまで援助したお金を返すよう言われるかもしれない。
お金だけでなく、会社の株や経営権だって怪しい。
正直、父が会社を追われようと、経営権が霧崎家から離れようとどうだっていい。
だけど、霧崎商事で働いている人達が職を失うことになったら?
私が逃げたせいで、大勢の人が不幸になってしまうとしたら……。
彼らから『お前のせいだ』と責められても自分の自由を貫ける覚悟が、私にある……?
そこまで考えて、もう逃げられないことを悟った。
私は麻生の御曹司である怜士と結婚しなくてはいけないんだ。