婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「……最低」
誰にとも無しに言葉が出た。
両親に対して、怜士に対して、それとも、何も知ろうとしなかった自分に対してだろうか。
今までの努力は何だったんだろう。
「十年も待ったんだ。今更反故にされてたまるか」
十年。それだけ長い間、私はこの結婚から逃れるために努力してきたというのに。
何もかも虚しくて、頭がからっぽになってしまったよう。
これからのことを考えようにも、何から考えたらいいのかすらわからず、呆然と立ち尽くすことしか出来ない。
ふいに腕を掴まれて、部屋の奥へと引き込まれる。
「ちょっと、なに……」
驚いて声を上げたものの、不自由な振り袖では抵抗しきれず、そのまま大きなベッドに押し倒された。