婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「きゃっ」
ふくら雀と呼ばれる結び方の帯がぎゅっと潰れる感触に気を取られていると、怜士も一緒になってベッドに乗り上げてくる。
突然のことに目を見開く私に覆いかぶさり、怜士が顔を寄せてきた。
柔らかい唇が私の拒絶の言葉を塞ぎ、そのまま飲み込んでしまう。
「んん…っ!」
ファーストキスを奪われた衝撃で抵抗が遅れてしまったのをいいことに、怜士の舌が口内を我が物顔で蹂躙する。
胸元を半襟ごと強引に開かれ、首筋にも唇が落ちてくると、さすがにこれはマズイと頭の中で大きく警鐘が鳴り響く。
呆けている場合ではないと正気を取り戻して必死に抵抗するも、両手を拘束され叶わない。
「ちょっと、なにする気……!」
「お前だってこの十年、充分楽しんだんだろ。諦めて結婚するんだな」
怜士から皮肉めいた言葉が投げつけられたけど、一体何のことを言っているのかわからない。