婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
充分楽しんだ? 私が?
冗談じゃない。今日の席で結婚を破談にするために、一体私がどれだけの努力をしてきたと思っているの。
そう言い返してやりたいのに、わざとらしく音を立てながら耳を責められ、身体が竦む。
「やめ……っ」
耐えられずになんとか顔を背けると、乱れた襟元から手を差し入れられ、思わず小さな声が漏れる。
学生時代からずっと勉強とバイトに明け暮れ、就職してからも恋愛には縁がなかった。
こんな風に、誰かに身体を暴かれたことも一度もない。
どうしよう。なんでこんなことに……。
どれだけ身体や手足を捩ろうと軽々と押さえつけられ、顔を背けても顎を掴まれて身動きが取れない。
「心配するな、すぐによくしてやる」
そう言うが早いか噛み付くようなキスをされて、呼吸もままならない。頭がクラクラして、徐々に何も考えられなくなっていく。