婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
裾の合わせから侵入してくる怜士の手がひんやりと冷たくて、それがさらに恐怖と悲しみを煽る。
脚の間に指を這わせられれば、嫌でもこの後の展開はひとつしか思い浮かばない。
「もう、やだ……やめてっ……」
純潔を後生大事に守っていたわけじゃない。
ただ恋愛する時間もなく必死だったし、それを押してまで夢中になれる男性に出会わなかっただけだ。
だけど、私にだって理想くらいある。
ハジメテは好きな人としたいし、相手も私を好きでいてくれる人がいい。
それなのに、どうして私は今、互いに好意を抱いていない相手に組み敷かれ、処女を散らされようとしているんだろう。
他に女性がいるのに、どうして……。
弱々しい涙声で訴える私に気付いた怜士は、身体を引き、眉間にしわを寄せた。
「え、お前……まさか、初めて……?」
ガタガタと震える私を見て怜士が放った一言で、堪忍袋の緒が切れた。