婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「陽菜、俺は」
「不本意だし、血を吐きそうなほど悔しいけど…。結婚はする」
「…結婚『は』?」
私の言葉に怪訝な表情を浮かべる怜士にきっぱりと宣言する。
「一度も恋愛したことがないまま人生の墓場に入るのは嫌なの。結婚する前に私が本当に好きな人と恋愛したい」
いや、『したい』なんて願望じゃ終わらせない。
絶対にしてみせる。
本物の恋も知らないまま、世界でいちばん嫌いな人と政略結婚だなんて冗談じゃない。
イケメンじゃなくていい。お金持ちじゃなくていい。ただ私だけを誠実に愛してくれる人。
学生の頃から憧れはあった。
待ち合わせして、当たり前みたいに手を繋いでデートに出かけたい。
家にお呼ばれして、お菓子とジュース片手にまったり映画を見たい。
私が作った手料理を「おいしい」って言いながらふたりで食べたい。
ドキドキする私を優しくリードして、そっとキスをしてほしい。
そんな願望を叶えてくれる人。