婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

保育士としては、育児に悩む保護者の助けになりたいと思うし、私で力になれることなら話を聞いて一緒に解決したいとも思っている。

『自分のため、家族のために、毎日頑張って働いているママが信頼されないわけないじゃないですか。子供との関わりは、量より質です。それに、しずくちゃんが喧嘩しちゃったのを話さないのは、きっと大好きなママを心配させたくないからですよ』

クラスでも活発だけどお友達を気遣えるしずくちゃんの様子を鑑みてそう伝えると、ママはホッとした笑顔を見せてくれた。

子供だけでなく、保護者の方からの感謝の言葉にもやりがいを感じるし、笑顔を見られれば嬉しくなる。

だけど野田さんの場合、自意識過剰かもしれないけど、違った感情が含まれている気がして……。

「箸ってこの年で必ず出来ないといけないものですか? 食事に時間がかかりすぎてしまうし、風呂に入る時間も寝る時間も遅くなっちゃって」
「うーん、そうですね。仕事から疲れて帰って、なかなか時間通りにルーティーンがこなせないとイライラすることもありますよね」

なるべく野田さんの思いに寄り添う形をとりながら、話をすすめていく。

「でも、ばら組さんは小学校入学に向けて大事な一年なんです。五、六歳になると、大人がすることの八割は出来るようになるんですよ。確かに初めは時間がかかってしまうかもしれないですけど、見守ってあげてください」
「そうですか。僕も仕事を持ち帰ったりしてて、あんまり食事に時間かけたりしたくないんですよね。陽菜先生みたいな女性が家にいて娘を見てくれたらいいんだけどなぁ」

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