婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

九時からクラスごとに朝の会が始まるので、園児は八時五十分までに登園する決まりになっている。

各クラスで季節に合わせた歌を歌ったり、体操をしたり、ひらがなを勉強したりして過ごし、お昼になったら給食が配膳される。

まんぷく保育園は食育に力を入れているため、お昼ご飯は毎日栄養士がバランスを考えて作った温かい給食が提供されるのも、うちの園が保護者に人気のある一因だ。

「今日の献立は鰹の照り焼きにきんぴらごぼう、たけのこ煮、わかめスープです」

がらがらと大きな音を立てながらワゴンを引き、給食の配膳に来た栄養士の月城千花は、私の学生時代からの親友。

くりっとした黒目がちの瞳は小動物のように愛らしく、優しくて控えめな性格や立ち居振る舞いは育ちの良さが伺える。

同級生なので同じ二十四歳だけど、彼女はすでに人妻。左手の薬指には、シンプルなマリッジリングが輝いている。

お相手は、令和の不動産王と呼ばれる月城颯真。

千花自身も父親が銀行のトップを務めているお嬢様だけど、その銀行と取引のある大企業、月城不動産の御曹司と二年前に結婚した。

< 43 / 262 >

この作品をシェア

pagetop