婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
元々は千花のお姉さんの婚約者だった相手との政略結婚だと聞き、彼と婚約して進路を変えさせられた彼女に心を痛めたし、優しさゆえに断れないのだろうと心配もした。
だけど、その心配も杞憂に終わった。
彼らは政略結婚とは名ばかりで、紆余曲折はあったものの、しっかりお互いを想い合っていたのだとわかったらしい。
今は話を聞くだけで「ごちそうさま」と言いたくなるほどのラブラブっぷりだ。
私の身に降り掛かっている政略結婚とは雲泥の差だと、大きくため息をついた。
「陽菜、大丈夫? やっぱり眠れてないんでしょ?」
「大丈夫、悩みは尽きないなってげんなりしてるだけ。千花が泊まらせてくれたおかげで、ちゃんと眠れてる」
怜士とのお見合いから今日で五日。
結婚はしないと両家の両親の前で啖呵を切ったものの、断れないような資金援助の話を聞かされ、結婚するしかなくなってしまった。
とにかくまずは振り袖を脱ごうとホテルから実家に帰ると、勘当すると言い出した父は、私と怜士の婚約が成立したと上機嫌な様子。
ひとりお酒を飲みながら「お前の荷物はもう怜士くんのマンションに送ったからな」と嬉々として告げてきた。