婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
午後の活動を終え、迎えに来た保護者に園児を引き渡すと、あっという間に午後四時を過ぎる。
このあとも延長保育で園に残る子も多くいるが、今日は早番だったので退勤となる。
活動日誌を書き終えると、二年先輩の山崎先生が声を掛けてきた。
「霧崎先生、もう上がり? 金曜だし久しぶりに飲んでいかない?」
「いいですね! 行きたいです!」
今年、0歳児のつぼみ組を担当している山崎先生は、私がこの園に就職した当時から教育係を務めてくれている。
男性にしては少し小柄だけど、そのおかげか優しげな雰囲気で園児にも人気が高い。
茶色い髪に緩いパーマをかけ、長めの前髪は仕事中は可愛らしいヘアピンで止めたり、ゴムでぴょこっと結んだりしている。
ベテランの先生も多い中、年も近くて気の合う彼とは、よく飲みに行く仲だ。
お互いに恋愛感情はなく、山崎先生に彼女が出来た時だけはふたりきりで会うのは避けていたけど、彼は二週間前に恋人と別れたらしい。
更衣室でエプロンを外し身支度を整えると、山崎先生とたわいないおしゃべりをしながら保育園の裏門へ向かう。