婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「一応言っておくと、俺は霧崎先生の同僚の山崎です。彼女が泊まってたのは俺の家じゃなくて、別の同僚の家みたいですよ」
「別の……?」
怜士の懸念に気付いたのか、山崎先生はさっき私に聞いたばかりの情報を付け足した。
「もちろん女性ですから、ご心配なく。でも今日から彼女、ホテル生活だって言ってましたけど」
「山崎先生!」
それ以上なにも言ってほしくなくて、怜士の腕を掴んだまま、先生に向かってブンブンと首を振った。
「じゃあ、俺はこれで」
「えっ?」
「お互い、相手がいるときはふたりでは飲まないって暗黙の了解だったろ?」
「相手って……、この人は別に」
山崎先生が思っているような関係ではない。
ただの政略結婚の相手。身売り先の御曹司というだけだ。
「俺嫌だよ、このまま霧崎先生と飲みに行ったら、視線だけで息の根止められそう」
わざと身震いするようなジェスチャーをして笑うと、山崎先生は怜士に向かって「ここじゃ保護者の目もあるだろうし、霧崎先生も困るはずです。痴話喧嘩はよそでやってください」と言い放った。