婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
子供の頃には実家である麻生家の豪邸にお邪魔したこともあるが、一人暮らしの部屋に来たのはもちろんはじめて。
コーチエントランスに車を停めてそのまま降りると、中から制服姿の男性が出てきて恭しく挨拶をして、代わりに運転席に乗り込んだ。きっと彼が車を地下の駐車場に持っていってくれるサービスなのだろう。
エントランスをくぐると広々とした空間のロビーがあり、重厚感のあるソファセットが鎮座している。
セキュリティを抜けた奥にはコンシェルジュサービスのカウンターが有り、怜士は彼らに私を今後一緒に住む婚約者だと紹介した。
グランドエントランスには間接照明に照らされた水の流れる壁があり、さらに奥にはラウンジも完備されているらしく、どこまで高級レジデンスなのかと目を瞠る。
こんなところに一人で暮らしているなんて。
改めて、旧華族という家柄だけが取り柄の霧崎家との差を見せつけられた気分だった。
そのままエレベーターで最上階の五階へ。
部屋に入るように促されるが、一体ここに何人の女性を連れてきたのだろうと思うと足が重くなる。